下肢救済・糖尿病
LIMBSALVAGE/DIABETES
下肢救済における 義肢装具士の役割は、 装具療法(フットウェア)。
下肢救済において、治療対象の多くが難治性の足潰瘍となります。 糖尿病性、膠原病性、静脈鬱滞性など、複合的な病態が関与するこの分野においては各専門の医療従事者がチームを組み、集学的治療を行う必要性があると考えています。
治療とリハビリテーションにおいて、患部保護を優先とした安静期間が長期化すると全身性の廃用症候群を引き起こし、筋力低下や関節拘縮などの歩行能力低下を招いてしまいます。
そこで装具療法を治療プログラムに組み込むことによって患部の保護と創傷治療、そしてリハビリテーションを同時に行うことが可能となります。 創傷治癒遅延を防止し、円滑な治療と歩行能力の獲得を目指す、その橋渡しになることが、義肢装具士の役割となります。
なお弊社には、一般社団法人日本フットケア・足病医学会による、認定師の資格を取得したスタッフが在籍しております。
下肢救済における最終目標は、 歩ける足を残すこと。
義肢装具士は下肢の機能検査と評価を行いながら、 患部の免荷、各関節の動きの制限・制動を組み合わせた装具、 フットウェアの選択と製作を行っていきます。
01 下肢機能検査と評価
治療期における治癒を阻害する外的因子の把握や足底圧上昇リスクの把握を行います。免荷治療に必要な装具の仕様やデザインを検討し、様々な検査や評価から予測を立てて、装具を製作しています。
検査・評価(一例)を見る
■ 下肢の可動域 ■ 残存筋と機能 ■ 足部・足趾変形の病態 ■ 切断の有無と部位 ■ 神経障害 ■ 皮膚病病変 ■ 創傷の有無と部位
■ 麻痺や脚長差 ■ 健側の状況 ■ 他職種による神経の評価 ■ キズの評価 ■ 感染の評価 ■ リハビリテーション評価 ■ 画像評価など
02 装具・フットウェアのデザイン
治療効果に大きな影響を与えるため、潰瘍患部における応力コントロールは装具療法において重要です。治療的な観点から、装具・フットウェアを検討・デザインする際には、減圧と免荷の使い分けが重要です。
圧迫やずれ、剪断などの外力を排除し、治療を促進するために潰瘍部分にかかる応力を減らすこと(減圧)や完全に応力をかけないこと(完全免荷)を目的とした装具の総称が免荷装具です。
治療時期による 装具・フットケアの分類
装具療法では、治療期と予防期の2つの時期に分けて使用目的を考えます。治癒を促進するためには、免荷や減圧を行う治療期の装具やフットウェアが必要であり、その後、予防期には再発を防止するための足部アライメントコントロールや減圧・免荷、機能代償を行う装具が必要です。
治療時期や症状に応じて、適切な装具やフットウェアを選択することが重要です。
医療用サンダルは、硬いソールが特徴で、踏み返し動作を制限することができます。さらにインソールを使用することで、足底荷重部の部分的な免荷や減圧が可能です。また、医療用フェルトとの併用もできます。
◆ PTB免荷装具 膝蓋靭帯や下腿軟部組織によって体重を支えるように設計され、創傷部位の完全免荷や部分的免荷を目的とします。より高度な免荷が必要な場合に使用されます。
◆ 免荷短下肢装具 足関節を固定することで踏み返しの動作を制限し、創傷部位に部分的な免荷や除圧を行う装具です。具体的には、装具を使用することで足底の負担を減らし、潰瘍治療を支援します。装具のデザインや仕様は、患者の創傷部位に合わせて決定されます。
◆ 短下肢装具(CROWブーツ) Total Contact Castingの概念に基づき、患部周囲の全体に均等に圧迫を加えることで治癒を促進する短下肢装具です。足関節の固定、可動域制限を行い、踏み返しの動作を制御しながら、潰瘍治療のための部分的な免荷や減圧を行います。創傷部位によってデザインや仕様を考慮して製作されます。
短下肢装具(CROWブーツ)
免荷短下肢装具
PTB免荷装具
減圧やアライメント補正、傷の再発防止や胼胝形成の遅延、疼痛の軽減を目的とし、日常生活で装着します。
足部の変形や欠損、局所的圧力による擦れや圧迫の改善を目的とし、インソールとの併用で部分的除圧や免荷、機能の代償を考慮し製作します。
シリコーン製の材料を使い、足趾の重なりやクロートゥによる足趾の圧迫や疼痛の軽減を目的とします。
1. DM PAD / 50代男性
右糖尿病性足潰治療の為切開排膿後に外科的デブリードマンにより第3、4足趾切断、第5中足骨切断術を施行されており、切断した右第4、5中足骨断端部と第1趾にベンチ形成しやすい。歩行による踏み返し動作により植皮部の境界部分に動きが出る為に難治性の残存潰瘍がありました。
治療期
下肢機能検査、評価を行い、第5列底屈位による足圧上昇が原因と推測できたため、まずはフェルトフォームにて潰瘍患部の免荷治療を行いました。
予防期
患部の治癒が進んできたので、第5列底屈位を考慮したインソールを製作し、患部の免荷と、靴底のロッカーソール加工にて踏み返しによる剪断力の軽減を図る靴型装具を製作しました。
田村義肢製作所からの声
今回の症例のように、下肢機能検査に基づく評価から、歩行時の足圧上昇に伴うベンチ下潰瘍の発生原因を特定した上で、足趾切断による足部の機能低下や足部変形、植皮部の脆弱化など潰瘍再発のリスク因子を考慮し、治療期のフットウェアをデザインします。 さらに予防期では、足部への荷重コントロールは常に行う必要性があるため、屋内外でのフットウェア装着が望ましいと考えます。
2. DM / 女性
重心位置が足部の前方に偏りやすい円背姿勢であり、さらに足関節背屈可動域制限もあるため、足趾は絶えず踏ん張るように屈曲位となっていました。これが足圧上昇の原因となり第1趾末節骨部に潰瘍がありました。
治療期
趾間パッドを装着する事で患部の減圧と、インソールのくりぬき加工で患部の免荷を行いました。
予防期
靴型装具は踏み返し動作時の足圧減少を図る為、ロッカーソール加工を施しました。
田村義肢製作所からの声
高齢者の靴型装具に過度なロッカーソール加工は安定性を欠く事になるため考慮が必要になります。