脳卒中・片麻痺 STROKE/HEMIPLEGIA

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脳卒中とは

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりする事によって脳の血流が滞り、脳が障害を受ける病気です。

脳の損傷部位や範囲・発症から治療開始までの早さによっては運動麻痺・言語障害・高次脳機能障害・嚥下障害などが出現する場合がありますが、早期の集中的なリハビリテーションによりこれらの後遺症の軽減が見込めると言われています。

運動麻痺に対するリハビリテーションには下肢装具が使用されることが多い為、製作に関わる事は義肢装具士の重要な役割となっています。

脳卒中とはイメージ画像

脳卒中のリハビリテーション過程と装具療法について

脳卒中後の運動麻痺の回復には段階に応じたプログラムが必要であり、リハビリテーションは発症後早期から開始し、急性期・回復期・生活期と途切れる事なく行われます。『脳卒中治療ガイドライン』の中にも記載がある通り、装具療法は歩行機能の訓練や改善の目的として推奨されており、重要性も高まっています。症状や回復程度により装具の使用目的や種類も変わる為、適切な装具の選択をする事が必要になります。

脳卒中のリハビリテーション過程と装具療法について フローチャート図
脳卒中・片麻痺 スライド画像
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時期別の装具療法について

  • 急性期
    急性期のリハビリテーションは歩行再建の源になり、残存している皮質脊髄路を刺激し、興奮性を高めることで麻痺の回復を促進する時期となります。

    座位・立位をとること(身体に重力をかけること)が意識障害の改善・廃用症候群の予防につながります。

    重度運動麻痺を呈する場合、膝関節の支持性が弱ければ麻痺側下肢で立位を保持することは困難となるので、長下肢装具を使用して立位・歩行訓練を行うことになります。

    膝関節を伸展固定することにより、麻痺側へ十分荷重をかけた状態での体幹平衡感覚の訓練、股関節・足関節周囲筋や可動域訓練を兼ねた立位・歩行訓練を恐怖心少なく安全に行うことができます。病院の備品を使用するか、適合が良くなければ早急に本人用の治療用装具を製作します。

  • 回復期 前半
    発症後約3ヶ月までは脳卒中患者の身体機能の大幅な回復が期待でき、日常生活・社会復帰に向け、生活期へつなぐ大きな役割があります。

    ADL(立位・歩行・食事・排泄・更衣等の日常生活に必要な動作)の改善を中心としたリハビリテーションが行われ、高頻度の課題特異的トレーニング(目標とする動作を獲得するために目標動作と類似した課題を反復すること)が必要になります。さらに本人にとって挑戦的な課題を徐々に増やして難易度を上げて行く事もモチベーションの向上に重要となります。

    特に歩行訓練時には麻痺側に十分荷重をかけ、股関節・膝関節・足関節の動作を再学習する為に、長下肢装具や短下肢装具が使用されます。

    ①膝の支持性が不十分な場合、長下肢装具にて膝関節を伸展固定して訓練を開始する。
    ②様子をみて膝関節の固定を解除した状態の長下肢装具で訓練し、膝の支持性向上が確認できたらカットダウンする。(長下肢装具は短下肢装具に分解できるようになっています。)
    ③短下肢装具にて歩行訓練をする。(膝折れ・反張膝・下肢の外旋の出現によっては、長下肢装具へ戻して訓練することも可能。)

    回復期 前半イメージ図

    回復程度により必要な装具の機能を見極め、使用する装具・もしくは製作する治療用装具を選択する事が必要になります。

  • 回復期 後半
    発症から約3ヶ月以降には身体機能の回復は停滞期に入ると言われており、退院後の生活背景を考慮し、回復まで至らなかった機能を代償する為の装具の検討を始め、どのような機能が必要か・生活のどの場面で使用するかを明確にする必要があります。

    屋外・屋内で装具を使用することになる場合は、装具の上から履く靴を購入してもらい、靴を履く練習は勿論、靴を履いた状態と履いていない状態での歩行の練習も必要になります。靴自体の重さにより足が上がりにくくなってしまう・靴底の傾きがあること(踵側が高く、つま先が低い事)によって床面に対する装具の前傾角度が変わり歩行の感覚が少し変わってしまう等、今後慣れていかなければならない事もあります。

    回復期 後半 イメージ図

    訓練用の装具と退院後に使う装具を2種類とも製作するか・兼用で製作するかどうかは、金銭面も大きく影響する為、ご本人・ご家族とのご相談が必要になります。身体障害者手帳を取得された場合は、更生用装具の申請も可能ですので経済的負担は少なく済みます。

    早期にご本人用の装具を製作するメリットは、リハビリテーション時以外も使用できる為、退院後の生活をイメージしながら病棟内で過ごすことができ、実用的歩行・ADLの獲得につなげやすい事です。しかし、製作時と退院時で体型や浮腫の変化が大きい場合は、適合しない可能性もあります。

    これらを考慮し、必要な装具の機能を見極め、医師・理学療法士・ご本人・ご家族と綿密な製作検討が必要になります。

  • 生活期 維持期
    生活期は身体機能の維持・向上、QOL(生活の質)の向上の為に、引き続き外来・通所・訪問リハビリテーション等を継続することが望まれます。

    この時期の装具は訓練用としてではなく、障害により失われた機能を代償する目的で使用され、歩行・ADLを安定させ日常生活を送る上で必要不可欠なものとなります。

    生活期の初めでは急性期や回復期に製作した訓練用装具(治療用装具)をそのまま使用する事になる場合が多いですが、時間の経過に伴い必ず以下のような不具合・不適合が発生します。

    製作時と比べて体型の変化がみられ、
    身体的に不適合となる。

    ・ 緩いことにより装具内であそびを生じる。

    ・ きついことにより圧痛を生じる・傷ができる。

    製作時と比べて身体機能の変化がみられ、
    機能的に不適合となる。

    ・ 身体機能の向上により過矯正になる。

    ・ 身体機能の低下により矯正が不十分になる。

    装具自体・部品の経年劣化・摩耗が
    みられる。

    ・ マジックバンドの付きが悪くなる・切れる。

    ・ 滑り止めが摩耗し、滑りやすくなる。

    ・ 破損を放置し、装具が使用できなくなってしまう。

    製作前に想定していた使用状況(使用場所・目的)では実際に使用していない。

    ・ 室内でも使用する予定だったが、装着が面倒になってしまった。

    ・ 装具に頼りたくない為、ご本人判断で使用を中止している。

    これらの不具合・不適合により、
    下記のような二次的災害が
    引き起こされてしまう可能性が
    高くなります。

    異常歩行

    関節拘縮や変形・痙縮の増悪

    装具不使用の生活など

    これらの不適切な状態で装具を使用し続けることを防ぐ為に、早期に装具の不具合・不適合に気づき、現在の身体状況に適合した装具の再製作・調整・修理を検討していく事が生活期の装具療法の重要なポイントとなります。ご本人・ご家族に気づいていただき当社へ相談していただくのは勿論ですが、外来・通所・訪問リハビリテーションを利用されている方であれば、ご担当の理学療法士や作業療法士の方も交えてご相談できれば、より良い装具の選択が可能となります。

    また、定期受診がない・リハビリテーションを受けられていないなどの理由で、装具の再製作や修理相談ができていないユーザーも散見されており、各地に連携機関を設け定期的な装具のフォローアップ体制を整えていく動きも進んでおります。当社としても各地域や連携機関との情報共有を増やし、多くのユーザー・様々なエリアでの対応をしていきます。

製作する装具の選択方法

実際に装具を製作するにあたり、医師や理学療法士~義肢装具士の間で様々な情報の共有が必要になります。下記が全てではありませんが、このような情報を提供していただき、ご相談・ご協力させていただければ、より最適な装具の選択が可能となります。

基本情報(年齢・性別・住所・医療保険・キーパーソン等)

製作前にご本人、もしくはご家族へ装具の使用目的や必要性の説明、費用・保険制度の提示が必要な為

発症年月日・発症部位

現時点で何期に該当するのか確認し、回復見込みを確認したい為

Brunnstrom stage(麻痺の回復程度をⅠ~Ⅵにステージ化した評価法)

随意運動・共同運動の有無・各関節の分離運動ができるか判断したい為

ROM(関節可動域)

→足関節背屈角度(膝伸展位)
10°以上の場合は背屈遊動の推奨
5°~0°で反張膝傾向の場合は踵補高の推奨(下腿の前傾角度を増やす為)
-5°以上の尖足変形がある場合は踵補高の推奨 (下腿の前傾角度を増やす為)
→膝関節伸展角度
-5°~-10°で伸展筋力が弱く膝折れ傾向の場合は背屈制限・背屈制動の推奨
-15°以上の場合はさらに非麻痺側との脚長差に注意
10°以上の過伸展で反張膝がある場合は-10°の伸展制限膝装具と背屈遊動底屈制限の短下肢装具併用の推奨

MMT(徒手筋力テスト)

→足背屈筋力・足底屈筋力
底屈筋の方が高い場合は下垂足となり、背屈補助の推奨
背屈筋・底屈筋ともに0または1の場合は底背屈固定もしくは制動の推奨
背屈筋・底屈筋ともに2または3の場合は底背屈制動もしくは10°程度の制限の推奨
→膝伸展筋力
0または1の膝折れ傾向の場合は背屈制限・背屈制動短下肢装具もしくは膝伸展固定の長下肢装具の推奨
2または3の膝折れ傾向で膝屈曲拘縮がある場合は背屈制限・背屈制動の推奨

筋痙縮の程度

金属支柱付きかプラスチックタイプかのご相談

膝折れ・反張膝の有無

→膝折れ傾向の場合
背屈制限・背屈制動短下肢装具もしくは膝伸展固定の長下肢装具の推奨
→反張膝傾向の場合
伸展制限の膝装具・背屈遊動底屈制限の短下肢装具の推奨

感覚障害の有無

内張り追加を推奨

退院後の生活環境(回復期)
もしくは現在の生活環境(生活期)

退院先が自宅か老健施設かどうか
独居かご家族と同居なのか
ご本人・ご家族の要望は何か等

装具選択の目安となる
フローチャート

装具選択の目安となるフローチャート図
装具選択の目安となるフローチャート図
田村義肢製作所 TAMURA MANUFACTURE OF ARTIFICIAL

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